chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

サエロック・ホームズの冒険~北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち 近世の観劇と読書』

北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち 近世の観劇と読書』(2018, 白水社)を読みました。 シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち - 白水社 シェイクスピアがイギリス文学の正典の地位を確立してゆく過程を、16世紀末から18世紀半ばの時期に、舞台の…

松浦陽次郎・文、山村浩二・絵『森の舞台うら』

『頭山』などで知られるアニメーション作家、絵本作家の山村浩二さんの絵がよくて、『森の舞台うら』(松浦陽次郎・文、山村浩二・絵、『たくさんのふしぎ』 2018年4月号、福音館書店)を読みました。 松浦 陽次郎 文 / 山村 浩二 絵『 森の舞台うら (たく…

ターニャ・ウスヴァイスカヤ『ノルシュテイン氏の優雅な生活』(2003)

ターニャ・ウスヴァイスカヤ『ノルシュテイン氏の優雅な生活』(2003、ふゅーじょんぷろだくと)(出版社のサイト)を読みました。ユーリー・ノルシュテインの弟子による、ノルシュテインの日常を描いた画文集です。 ノルシュテイン氏の優雅な生活 (ラピュタ…

マライ・メントライン「ケバブ」(『飛ぶ教室』第52号)(追記あり)

マライ・メントライン「ケバブ」を読みました。 児童文学誌「飛ぶ教室」の第52号、『飛ぶ教室 特集 「飛ぶ教室」的世界一周旅行!』(2018、光村図書)に収録されている短編小説です。 家出してから三年、フェーリクス少年はベルリンのケバブ屋で住み込みで…

高橋ブランカ『クリミア発女性専用寝台列車』

高橋ブランカ『クリミア発女性専用寝台列車(プラツ・カルト)』(2017、未知谷)を読みました。高橋の高の字は「はしごだか」だけれど、ぼくの環境ではうまく表示されたり文字化けしたりしてしまうので、広く使われている漢字で書きます。 www.michitani.com…

『ユーリー・ノルシュテインの仕事』(ふゅーじょんぷろだくと)

ロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインの画集『ユーリー・ノルシュテインの仕事』(2003, ふゅーじょんぷろだくと)を読んだ。 『ユーリー・ノルシュテインの仕事』。「きりのなかのはりねずみ」のはりねずみくん、こぐまくんとともに。 画…

マウリ・クンナス『わんわん丘のゆかいな昔話』

フィンランドの絵本作家マウリ・クンナスの『わんわん丘のゆかいな昔話』(いながきみはる訳、猫の言葉社)を読んだ。 犬や猫、ぶたが人間のように暮らす「わんわん丘」を舞台に、「電気や自動車のない時代」のフィンランド南西部の民話を描いた絵本だ。クン…

8月最終週に読んだ本:イーグルトン、オースター

前回の日記から1週間たった。あれから読んだ本をメモしておく。 テリー・イーグルトン著、大橋洋一訳『文学とは何か―― 現代批評理論への招待 ―― (上)』(岩波文庫、2014) イーグルトンの文学理論入門である『文学とは何か』が文庫化された。2008年の『25…

おばけがいっぱい

えこ(id:bambi_eco1020)さんの「個人的に好きな「おばけ」の絵本とこわ〜い絵本を紹介します♪ - バンビのあくび」がおもしろかったので、「そうだ!おばけの本の話をぼくも書こう!」と思いついた。 でも、こわい本については書かない。ぼくはこわい話には…

Paul Auster, Invisible

Paul Auster, Invisible (Henry Holt And Company, 2009)を読んだ。 Invisible 作者: Paul Auster 出版社/メーカー: Henry Holt & Co 発売日: 2009/10/27 メディア: ハードカバー クリック: 10回 この商品を含むブログ (5件) を見る 1967年のニューヨークと…

川本静子『ガヴァネス(女家庭教師) ヴィクトリア時代の<余った女>たち』

川本静子『ガヴァネス(女家庭教師) ヴィクトリア時代の<余った女>たち』(中公新書、1994)を再読した。 ガヴァネス―ヴィクトリア時代の〈余った女〉たち 作者: 川本静子 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2007/11/20 メディア: 単行本 クリック: 1回 …

本好きへの100の質問

本好きへの100の質問について 本好きへの100の質問が絶賛リバイバル中らしいのでのってみた。 たくさんかいている人がいるのだが、id:saebouさんの 本好きへの100の質問 - Commentarius Saevus がおもしろかったです。 001. 本が好きな理由を教えてください…

最近読んだ本: フォークナー『アブサロム、アブサロム!』

しばらく気づかなかったのだけれど(そうしょっちゅう本屋やCD屋に行かないし)、岩波文庫でウィリアム・フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子訳)がでていました。アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)作者: フォークナー,藤平育子出…

宮下誠さん逝去

多田雅範さんのNiseko-Rossy Pi-Pikoe Reviewで知ったのだが(6月20日の記事になってるけど、26日に書かれた箇所で)、美術学者で音楽に関するすばらしい著書もある宮下誠さんが、5月23日に亡くなったそうだ。 ほかにネット上では、mmpoloの日記、LINDEN日記…

村上春樹『1Q84』とその受容に内在するカルト宗教性

村上春樹『1Q84』は以前も書いたように、カルト宗教、あるいは、思想のドグマ性をめぐる小説になっている。 これまでの村上作品と比較すれば、より具体的な形で、コミューンを作り上げる類の新興宗教団体が描かれているし、一見するとカルトバスター小説のよ…

村上春樹『1Q84』が具体的にもたらしたもの

ちょうど仕事がひと段落して時間を取れたので、今日昨日で村上春樹『1Q84』を読むことができました。物語の構成としては、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『海辺のカフカ』と同じくふたつの話が交互に進んでいく形で、「ハードボイルド・…

村上春樹の新作長編小説とジョイス『ダブリナーズ』

村上春樹の新作長編の発売が決まったので、予約しときました。『1Q84』(いち・きゅー・はち・よんと読む。アイキューハチヨンと見間違いました。)。……オーウェル?もう全然新しい小説は読まなくなったので、今どういうのが流行ってるかとか、全然わかりま…

テッサ・モーリス=スズキ『北朝鮮へのエクソダス』

テッサ・モーリス=スズキ『北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる』(朝日新聞社)を読んでいます。 去年は歴史・社会学方面の本はあまり読めなかったので、今年に持ち越しているのだけど、これは去年読んでおくべきだったなあ。なかなか市立図書…

ペット・サウンズ

ジム・フジーリ、村上春樹訳『ペット・サウンズ』(新潮社)をいただきました。 あのビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』についてのノンフィクションです。 ブライアン・ウィルソンがこのアルバム(だけではないのだけど)を作り上げた前後にレコード会…

今月のよつばと!

『よつばと!』は好きなのだけど、連載されてる雑誌にはほかに読みたい漫画がない。 だからいつも雑誌は立ち読みで済まし、話を忘れかけたころに単行本が出るんだけど、先月と今月は電撃大王を買ってしまった。実にぐっと来る話だったので。よつばがはじめて…

ぼくのカラヤン、クレンペラー体験

宮下誠『カラヤンがクラシックを殺した』感想文の続きです。 最初の記事はこれ。 先の記事で全体を通じての感想を書きました。ここでは、ぼくのカラヤンおよびクレンペラー体験をかきます。ぼくはそれほど多くカラヤンを聴いていない。幼いころからうちにあ…

宮下誠『カラヤンがクラシックを殺した』

中古CDかって、何も表示がなかったのにCDだけレンタル落ちで、しかも傷だらけで読めなかったりすると、腹たつよね。……読めなかったりしました。 二度とあの店いかねー凸(゚Д゚#)宮下誠『カラヤンがクラシックを殺した』(光文社新書)を買いました。 宮下氏の…

「十二国記」新作「丕緒の鳥」

*「十二国記」新作「丕緒の鳥」より加筆の上、転載してます。yomyom6号を買いました。小野不由美の「十二国記」シリーズの最新短編「丕緒の鳥」(ひしょのとり)が掲載されているということなのでね。 講談社から大部分が出版されているシリーズですが、今回…