chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

松浦陽次郎・文、山村浩二・絵『森の舞台うら』

 『頭山』などで知られるアニメーション作家、絵本作家の山村浩二さんの絵がよくて、『森の舞台うら』(松浦陽次郎・文、山村浩二・絵、『たくさんのふしぎ』 2018年4月号、福音館書店)を読みました。

松浦 陽次郎 文 / 山村 浩二 絵『 森の舞台うら (たくさんのふしぎ 2018年4月号)

松浦 陽次郎 文 / 山村 浩二 絵『 森の舞台うら (たくさんのふしぎ 2018年4月号)』

 循環をなして森を作り出す動植物や土、大気の働きを舞台になぞらえている。しかし、最初から擬人化キャラクターだけが出てくるのではなくて、本文は写実的な絵で始まる。表紙は舞台「森の舞台うら」の様子で、扉絵が客席に座っている子供たちの絵だ。これから舞台が始まりますよー、なのだけれど、いざページをめくって本文に入ると、最初に目に入るのは写実的なタッチの樹の絵だ。本当に森に行った気になる。
 見開きの真ん中に一本、大きな樹が生えているのに目がいって、それから文を読むのに左から右に視線が動くと、一枚の絵の中で森の四季を巡るようになっている。一枚の絵の中で私たちの目と心を動かして時間の流れを感じるのは、絵だからこそできることだ。とても気に入った。山村さんの絵本『おやおや、おやさい』などを読んだら通じるものを感じるだろうけれど、擬人化された森の裏方たちの絵もかわいらしい。土中の養分をとどめる機能に準じて、砂くんとシルトくんと粘土くんの服のポケットの数が違っていたりする。絵のおもしろさと知識の伝達の両方がよく考えて描かれている。かわいいだけじゃないのだな。

 余談だが、ぼくはこどもの頃『たくさんのふしぎ』を定期購読してもらっていた。1985年から1993年くらいまでの分はうちにそっくりあるのだが、それからはとんとご無沙汰で、何度か内容に引かれて買ったけれども、今回も久しぶりの『たくさんのふしぎ』だったのだが、堀内誠一さんの題字と、巻末の「ふしぎ新聞」は昔のままで、懐かしかった。

 

森の舞台うら (月刊たくさんのふしぎ2018年4月号)

森の舞台うら (月刊たくさんのふしぎ2018年4月号)