マライ・メントライン「ケバブ」(『飛ぶ教室』第52号)(追記あり)
マライ・メントライン「ケバブ」を読みました。
児童文学誌「飛ぶ教室」の第52号、『飛ぶ教室 特集 「飛ぶ教室」的世界一周旅行!』(2018、光村図書)に収録されている短編小説です。
家出してから三年、フェーリクス少年はベルリンのケバブ屋で住み込みで働いていたが、店のオーナーであるトルコ人のおじいさんが店を閉めることにした。三年間の記念におじいさんが「
おなじみの民話を思わせる筋立てで、それぞれ別の民話を連想させる登場人物が出てくる。その翻案が楽しい。気づいてニヤッとする楽しみだよ。挿絵もかわいいです。さらに、現代の物語に導入するときに、移民であったり高齢者介護だったり、ステップファミリーといった、われわれの時代の話に語りなおされているのがだいじなところだ。往々にして我々の社会は厄介者を追い払うか、見えない場所に押し込めるか、見なかったふりをしてやり過ごすのだけれど、この物語では、ケバブ屋のおじいさんとフェーリクス少年は目の前の人に、手持ちの手段でできることをする。
著者自身による解題がツイッターにあるので、あわせて紹介する。
児童文学誌『飛ぶ教室』2018年冬号に、短編『ケバブ』が掲載されました!https://t.co/VuidxShOBM
— マライ・メントライン@職業はドイツ人 (@marei_de_pon) 2018年1月28日
何かとの出会いの意味は、相手がもたらしてくれるものではない。むしろ自分でつくってゆくものかもしれぬ。そんな話です。でも別の解釈もありえて、それが小説というもの。牧野千穂さんの挿絵が素敵! pic.twitter.com/71IoNozy1z
ひとりの「わたし」にはできることがなぜ、「わたしたち」にはできないのか?という問いであろう。わたしたちといったときに、その中にいるほかの誰かがやってくれることに寄りかかっていることが多いのだ。それって自ら何かをしていることにはならないよね。
そのときしたことが巡り巡って、二人をそれぞれ最初は思いもしなかった場所に連れてゆく。フェーリクスの旅路が主筋なのだが、2度目に読んだ後で、おじいさんがフェーリクスを店に置いたことが、その後のおじいさんの幸せへの第一歩だったのだ、と気づいて、なんともうれしくなった。ケバブみたいにぱくっと食べたら、じゅわっとおいしい小説である。
2月19日追記。
光村図書のウェブサイトに、マライ・メントラインさんのインタビューが掲載されている。執筆に際してのコツや意図などが書かれている。「ケバブ」はマライさんの最初のフィクションだそうだ。次はいつ読めるかな?
2月21日追記。インタビュー後編がアップされました。
ぼくは「興味はあるけど踏ん切りがつかない」若者だったので、外国に行こうという行動を起こしたのはすごいなあと思いますね。「あなたは体も悪いんだし、難しいんじゃない」といった言葉に従ってしまったのですよね。
うんちの絵本は子供に人気がある話、そうそう!ぼくは柳生弦一郎『おしっこの研究』(福音館書店)がなぜかとても好きで繰り返し読んでた。