chilican's diary

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Egberto Gismonti / :rarum - Selected Recordings

Egberto Gismonti / :rarum - Selected Recordings (ECM :rarum XI) を聞く。

ゴダールのサントラ以外、コンピレーションを出すのには消極的そうなイメージがあるECMだけれども、この":rarum"シリーズ以前にも、(邦題は『ECM 24bit ベスト・セレクション』。……なんと即物的で、無味乾燥なシリーズ名だ)コンピレーションは折りにふれ、出しているらしい。
ECMマニアの皆さんのweb上での記述やら、稲岡邦彌『ECMの真実』に詳しい。

rarumってのは「貴重なもの」を意味するラテン語をシリーズ名にしてあると思うのだけど、デジタル・リマスターが施されていたり、キース・ジャレットのように未CD化音源が入っていたりするあたり、確かに貴重ではある。
おまけにECMにはよくあることだが、デ・ステイルを思わせる、簡潔、機能的でありながら美しいパッケージもいい。

ただしジャレットの場合、選曲にあたって「あまり聞かれていない、あまり時間的に長くないもの」になっているので、ケルンもスタンダード曲もなしである。ジャレットでも一枚買ってみるべえ、という人が買うにはむかないと思う。その点、ぼくのような、同時代的に聞きだしたのは病気復帰後、というファンにはうれしい一枚。

さて、エグベルト・ジスモンチである。
ECMにはたくさん録音があるのだけど、ここに収められているのはブラジルのミュージシャンとのコラボレーションが中心。
ジャズファンにはおなじみナナ・ヴァスコンセロスや、ジョビン、坂本龍一との録音で知られるジャキス・モレレンバウンがいる。
その代わり、チャーリー・ヘイデンや、ヤン・ガルバレクとの録音は一切はいっていない。

が、そんなことはまったく気にならない。
見事なまでに全曲よくて、しかもコンピレーションとは思えないような、アルバムとしての統一感がある。

これはきっとブラジルに焦点を当てた選曲に違いない!と思ったら、本人がライナーノーツでそう語っている。
聞き手がそう思うであろうことは先刻お見通しってか(´・ω・`)

それはともかく、うまいんだけど速弾きにはしらない(速弾きは速弾きで曲芸的に楽しみますがね)、和音を滋味深く聞かせるアコースティック・ギタリストというと、ジスモンチかブランドン・ロスと言うことにぼくとしてはなります。