chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

病室の音楽 - Mika Vainio

Mika Vainio / "STATION 15, ROOM 3.064" PARTS 1-5 (ATAK014, 2009)

post-itさんの「デンシノオト」で取り上げられていて、おもしろそうだったので買ってみた。

電子音楽グループPan Sonicの中の人のソロアルバムだそうだ。Pan Sonicは学生のときに実験音楽に詳しい友人に聞かせてもらったのと、佐々木敦の『テクノイズ・マテリアリズム』『(H)EAR―ポスト・サイレンスの諸相』のなかで描写されているのでしか知らずに来た。近年は動画サイトで最新のパフォーマンスがみれたりするのだが、この手の音楽のコンサートというのは、動画でみてもあまりアピールしてこないし、テクノ・ハウス系のクラブイベントは昔会場で体調を悪くした経験があって、それ以来近寄らないことにしている。そのような経緯があって、自分でお金を出して聞くのはこれが初めてだ。

かなりボリュームを大きくしなければ聞こえてこないドローン、がさがさという、いわゆる物音や虫の声がオルガンのような響きへ徐々に徐々に変化していく曲などは時間感覚の変容や聴取そのものを問う類の作品なのだけれど、ドローンの上に高音がかぶさっていて、何気なく聞いているとドローンから注意をそらされてしまうなど、面白い感覚が味わえる。

マリンバや架空のマレット楽器を思わせる音、あるいはピンク・フロイドの"Echoes"冒頭にでてくる、ピアノを変調させた澄んだ高音を思わせる音で点描的に旋律が奏でられる2曲が気に入った。

入院した病室で作ったという事情があるからなのか、全体として「うるさい」感じ、物理的に痛みを覚えるような音はあまりなく、点描的な旋律などはかわいらしくさえある。

本作品はダウンロードのみでの販売なのだが、ぼくは320kbps・DRM制限なしのmp3で販売しているcommmonsmartで購入した。
iTunes StoreDRM制限の厳しい、128kbpsでの配信で、いささかこの手の電子音楽を楽しむには不満の残る販売形態になっている。