chilican's diary

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前衛レーベルからの洒脱なクレズマー・ジャズ - Feldman/Caine/Cohen/Baron

ジョン・ゾーンのTzadikレーベルにはいくつかのシリーズがあるが、「Radical Jewish Culture」シリーズはものによってはかなり激しく、なかなか聞くのは厳しい音楽で、買ったけど手放しちゃうなんてことがしばしばある。Tzadik自体がなかなかポップミュージックとして聞くには奇矯だし、かといってアカデミックでもないものの巣窟なんだけどね。とにかく幅が広いのでレーベルを丸ごと受け入れるってのはなかなか難しいと思う。


そんな中ディナー・ミュージック的にも楽しめるアルバムが出た。
Mark Feldman / Uri Caine / Greg Cohen / Joey BaronのカルテットによるSecrets (Tzadik, 2009)だ。
ヴァイオリン、ピアノ、ベース、ドラムの編成でジャズ化したクレズマー音楽をやっているのだが、これが実にスウィンギーで聞いていて気持ちがいい。曲によっては哀感の強いものもあるし、急速調でドライヴする展開もあって、飽きさせません。ダウンロードで買ったので、あまり詳しくないTzadik公式サイトの記述くらいしかクレジットの情報がないのだが、口伝で伝えられてきた東欧の敬虔派ユダヤ教徒の音楽、ハシディック・ソングを取り上げているらしい。

フェルドマンとバロンジョン・ゾーンやビル・フリゼールジョン・アバークロンビーらとの共演でおなじみだし、コーエンもマサダメンバーだったはずだ。フェルドマンのヴァイオリンはいつきいてもすてきな、美しい音色を持っている。ユリ・ケインはぼくにとっては初めてだが、リリカルなタッチの端正なピアニストという感じだ。

バップ原理主義者とユダヤ嫌いは別として、拒絶する人は少ないだろう。
Tzadikにはめずらしく、とんがった音楽を好まない人であっても楽しく聞けるアルバムだ。