chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

嘆の才能

菊地成孔の『スペインの宇宙食』を読んでいていまさら気付いたことなのだが、この本に収められている文章の出来事は共に菊地とぼくの「発症前」のことであり、本がでたのが「発症後」であるという共通点だ。「前」のぼくを知っていた人たちのほとんどとは音信が途切れ、大切な人の幾人かとはもう二度と会えない。そのことにいまさらだけれど言葉を失った。ぼくの過去を惜しんで嘆く才能は子供のときから筋金入りで、5才の時に引っ越して幼稚園も大好きな近所も手元からなくなって、引っ越しの車のなかでべそをかきつづけた記憶がある。