chilican's diary

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フランク・ザッパ「母の日記念シングル」(2015)

 フランク・ザッパの「母の日記念シングル」が公式サイトで発売(配信)されました。

 公式サイトの情報はこちら。2015年5月10日の項。

www.zappa.com

 去年の母の日配信は2曲あったのですが、今年は1曲です。

 Pick Me, I'm Clean (1980年7月3日、ミュンヘンオリンピアハレ」でのライブ録音。Frank Filipettiによる2015年ミックス。公式初出音源。)

 演奏メンバーは、
Frank Zappa - lead guitar & vocals
Ike Willis - rhythm guitar & vocals
Ray White - rhythm guitar & vocals
Arthur Barrow - bass & vocals
Tommy Mars - keyboards & vocals
Dave Logeman - drums
 

 ライブアルバムTinsel Town Rebelion(1981)と同時期の録音です。この6人編成のバンドは同作にも2曲で登場、"Pick Me, I'm Clean"も80年後半のツアーから、別編成の録音で収録されています。ローグマン入りはこれが初めてのリリース。
 この曲は「グルーピーもの」の歌詞で、英語をあまりうまく話せない女の子がバンドマンを「清潔だから、あたしを選んでよ」と誘うのだが、ちょっと前のザッパバンドのメンバーと思しきバンドマンと軒並み仲良くなっているうえに、どうも「清潔」ではなさそうである。

 「ヴィニーはナマでやるの」

 アルバムに収められることになる80年秋冬のツアーはヴィニー・カリウタがドラムだった。へえ、ヴィニーがねえ……とニヤニヤする観客もいただろうな。

 8人編成(上記に加えてリズムギター、キーボード・トランペットが加わる)のアルバムバージョンではトランペットがぱぱあーと入ってスローなヴァースと、アップテンポな「ヴィニーはナマ」パート、FZの充実したギターソロで雰囲気が変わるのだが、今回のローグマン・バージョンはギターソロ以外アップテンポで、パワフルなポップロックになっている。正直なところ、ぼくはデイヴィッド・ローグマンをザッパバンドには短期間しかいなかった地味なドラマーとみていて、良いと思ったことがほとんどなかったのだが、このシングルを聴いて驚いた。カリウタの演奏はパートごとの変化を鮮やかに見せつけるし、別の曲ではザッパのギターソロの向こうを張って、ほとんど同時進行でドラムソロをやっているようなもので、実にエキサイティングである。しかし、ローグマン・バージョンの"Pick Me, I'm Clean"はすいすいと飛んでいくザッパのギターソロがよい。同時にソロをやるんじゃないんだ、フランクをのせるんだよ、っていってるみたい。

 既発表のローグマンの音源は分厚いキーボードやコーラスワークが売り物の曲が多く、ドラムはもこもこした音になっていた。それらに比べるとこのシングルは楽器の音の分離をよくするミックスで、埋もれていたローグマンにやっとスポットが当たった。埋めていたのはミックスだけでなく、半分以上はぼくの思い込みだっただろうけどね。

 

Tinsel Town Rebellion

Tinsel Town Rebellion