chilican's diary

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本当に好きなことを、好きな人と一緒に 『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』

 『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(グザヴィエピカール、ハンナ・ヘミラ監督、フランス/フィンランド、2014)(映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』公式サイト)を見てきた。

 以下の感想はネタバレを含んでいる。筋がわかってしまったら、さっぱり興がそがれるという映画ではないと思うが、何も知らずに視聴したい方はご注意。


映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』60秒予告 - YouTube

 ムーミン高山みなみ)一家(ムーミン親子にフローレン(かないみか)、ミイ(佐久間レイ)、イタチのようなホワイトシャドー(桐本琢也))がムーミン谷から、地中海沿岸のリゾート地、リヴィエラに遊びに行くおはなし。
 ムーミン谷の人々はおおむね普段から谷に暮らしているように描かれているが、本作ではミムラとミイの姉妹は一家とは初対面になっている。
 ムーミンパパ(大塚明夫)とフローレンは名士との社交や贅沢なホテル暮らしを存分に楽しむのだが、女優にあこがれて着飾り、プレイボーイに誘われて舞い上がるフローレンが面白くないムーミンと、高級ホテルでもつましい暮らしを好み、またリゾートになじめない息子を顧みないパパにも不満な、ムーミンママ(谷育子)はホテルを出て、乗ってきたボートで寝泊まりする。パパと親しくなった、こっそりと彫刻をものし、富と名声とは無縁の『芸術にささげる人生』にあこがれる富豪、モンガガ公爵(三村マサカズ)も母子とともにボートで過ごすのだが……。

 CGを全く使っていないかどうかまではよくわからなかったが、手書き風で柔らかな画風は日本のテレビアニメ『楽しいムーミン一家』(テレビ東京、1990)に通じるものがある。吹き替えのキャストも明らかにこのアニメを念頭に置いていて、ムーミン谷のおなじみの登場人物(旅に出る面子のほかに、スナフキンミムラ姉さんが登場する)は同じ声優が起用されている。本放送当時、北海道の一部地域(面積では、視聴可能な地域のほうが「一部」であった)ではテレビ東京系を視聴することができなかったので、ぼくは『楽しいムーミン一家』をリアルタイムでは見ていないのだが、のちに見たらしく、このキャストにもそれなりのなじみがある。アニメ洋画ではすでにお決まりになった芸能人の吹き替えはネット上では批判をしばしば見るが、本作のさまぁ木村カエラはエンドクレジットを見るまで気付かなかった。

 スナフキンの登場シーンとフローレンのおしゃれ七変化は映像的に見ものだった。ムーミンのやきもちはモンガガ公爵がお金持ちのままで芸術家として生きてゆくまでと並ぶ物語の柱なのだが、これがもう見ていてイライラするくらいにじりじりと燃え続けていて、どっと燃え上がるわけでもないし、なかなか始末に負えない悋気である。下の写真は前売り券についてきたクリアファイル。見てよ、ムーミンの目!ムムム!

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 海賊の捕虜になっているのに全然緊張感がなく、かなり浮世離れした人物として描かれるミムラ姉さんだが(この海賊のエピソードは実に楽しい)、かなりの大物だ。「ミイがいないとつまらない」は本作の肝の一言だと思う。

 「ほんとうにしたいことをする」、「人目にとらわれない」、「地に足の着いた暮らし(夢を見るのは欠かせないが、それだけでは暮らせない)」といったことを称揚する映画だった。