chilican's diary

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バルトークからジミヘンへ、電子音の恍惚 Kronos Quartet Plays Sigur Rós


Kronos Quartet Plays Sigur Rós (Nonesuch, 2007)

クラシックの「現代音楽」に限らず、ロック、ジャズ、世界各地の音楽をレパートリーに持つ弦楽四重奏団クロノス・カルテットアイスランドアンビエント・ロックバンド*1シガー・ロスの曲"Flugufrelsarinn"を取り上げた一枚。
一枚、と書いたけれども、デジタル配信のみで「星条旗」(ジミヘンのバージョンを取り入れてのアレンジ版)とのセットなので、事実上シングルだ。iTunes StoreとNonesuch Storeで取り扱っているけれど、iTSがDRMつき128kbpsのAACで300円なのに対し、Nonesuch StoreはDRMなし320kbpsのmp3で2ドルなので、クレジットカードがあって、英語サイトでの購入も平気な人なら、iTSで買う理由はない。mp3ファイルにはジャケットが埋め込まれていたりはしないが、ジャケットがほしければ、商品サイトにあるものをローカルに保存すればいいだけだし。

さて、シガー・ロスの"Flugufrelsarinn"("The Fly Freer"と英語では訳されている)だが、たゆたうような中にひとすじ、哀愁のある旋律があって、ほっこりします。クロノスQを聞く人は特にクラシック一筋ではない人が多いと思うけれども、クラシック音楽的な文脈でもグリーグドビュッシーが好きな人はいける演奏だ。ぼくはメシアンのオルガン曲なんかの陶酔する感じも連想した。バルトーク好きも、過激なリズムをこの曲に求めなければ受け入れると思う。もう一曲の「星条旗」はジミヘンの、ウッドストックで有名なあれ。ジミに倣ってコンサート音源がおさめられている。バルトーク弦楽四重奏第四番とジミヘンをまっすぐにつなぐ編曲になっている。透明感があるので、ジミヘンってよりはテリエ・リプダルみたいなあばれようだけども。どちらも電気/電子楽器のフィードバックノイズを弦楽器で再表現/表象して見せた好演だ。

クロノスQは新譜Floodplainもでた。試聴したところ、中東から北アフリカあたりの音楽を取り上げたもののようだ。

*1:という理解でいいと思うのだけど、なにぶんちゃんと聞いたことがないので、よくわからない。有名な胎児のジャケットのアルバムは昔聴かせてもらったことがある。その時点ではロックの文脈だと、ロジャー・ウォーターズが引っ張っていたころの(要するに一番有名な)ピンクフロイドとかとともに聞けそうな感じだった。