chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

ストラヴィンスキー『エディプス王』

N饗アワーで、デュトワ指揮、ストラヴィンスキーのオペラ・オラトリオ「エディプス王」を見ました。
N饗アワーのサイト

デュトワは札饗、PMFで馴染み深いし、原テクストはソフォクレスの『オイディプス王』だし、ストラヴィンスキーだし、と、ぼくの興味を引くポイントがそろっていたんですね。そのわりにはこの曲聞いたことなかったので、よい機会でした。日本語のナレーションつき(歌詞はラテン語)ってのは珍しいのかな。それとも、どこの演奏会でもそこの言葉で語られるんだろうか?オイディプスの筋を知らない聴衆には親切だよね。欧米でこの曲を聞くであろう層がオイディプスを知らないというのは考えにくいことだが。

今回の語り手だった平幹二朗のインタビューも放送されたのだが、どうもフロイトの「エディプス・コンプレックス」に引きずられた解釈をしているような印象を受けた。
男にとっての人間関係を母子関係に還元して、そこに普遍性を見出してるところとか。オイディプスだけではないんだけど、ギリシャ悲劇の持つ普遍性って、登場人物が良かれと思ってする行動がことごとく、悲劇の発現につながっていくところだと思う。ぼくはすべてを性行動に還元するフロイトをあんまり信用してないから、フロイト派的な言説に違和感を覚える傾向が強いかもしれない。

さて、ストラヴィンスキーのオペラの話をすると、主役の歌手たちよりも、合唱(コロス)の力をずっと強く感じました。すげえ迫力。特に予言が実現していたことが明らかになる手前の、トランペットのファンファーレの後のところはぞくぞくした。ぼくはベートーヴェンにしてもマーラーにしても、そんなに歌のついたオーケストラ曲を好んで聞くわけじゃないんだけど(合唱ものでは、たとえばベートーヴェンは第9番より合唱幻想曲がいい)、これは気に入りました。