ターニャ・ウスヴァイスカヤ『ノルシュテイン氏の優雅な生活』(2003)
ターニャ・ウスヴァイスカヤ『ノルシュテイン氏の優雅な生活』(2003、ふゅーじょんぷろだくと)(出版社のサイト)を読みました。ユーリー・ノルシュテインの弟子による、ノルシュテインの日常を描いた画文集です。
ウスヴァイスカヤはロシアの画家、アニメーターで、ユーリー・ノルシュテインのスタジオの一員だ。略歴によると1995年からノルシュテインの下で仕事をしているそうなので、彼女は『ロシア砂糖のCM』、『おやすみなさいこどもたち』、『冬の日』そして『外套』のアニメーションに参加していることになる。ノルシュテイン関連書籍にも名前がたびたび出ているが、この間ついに手に入れた豪華画集『ユーリー・ノルシュテインの仕事』には、『霧の中のハリネズミ』の制作方法を再現したイラストと、ノルシュテインスタジオ図解が彼女の絵で載っている。これらのイラストがなんとも軽やかでユーモラスだったので、ウスヴァイスカヤの単著も読んでみることにした。
元は彼女の日記や友人への私信として描かれた素描だった見開き2ページのイラストに短文がつく形式で、テーマごとに6章に分かれている。創造の苦しみや、アニメーションが低くみられていることに憤り、苦悩するノルシュテインの姿も描かれているが、陽気で楽しそうなノルシュテインと周りに人々の暮らしが描かれている。陽気なおじさんユーラ(と愛称で呼びたくなる)と、もこもこの犬、ピラートが主役だ。このピラートは「おやすみなさいこどもたち」に出てくる紳士で小さなお友達の世話役を引き受けるしっかりした犬のモデルなんだけど、ターニャの絵の中のピラートは、まさにもこもこの友である。これは作品に出したくなるよなあ。素早く描いたスケッチだからこそだろうが、絵が動き出しそうな躍動感に満ちている。この絵がアニメーションになるのを思い浮かべずにはいられない。
また、ウスヴァイスカヤは、チェブラーシカの童話版(映画やのちの絵本の原作にあたる)『新訳 チェブラーシュカ わにのゲーナとおともだち』(エドゥアルド・ウスペンスキー著、こじまひろこ訳、2002年、平凡社)の挿絵も書いている。ウスヴァイスカヤの描くチェブは柔らかくて暖かい色合いで、ほっぺが赤く染まっているのがかわいいです。訳者の児島宏子さんのサイトでは、本には載っていないウスヴァイスカヤのスケッチも見られます。
http://www.asahi-net.or.jp/~IR4N-KHR/kojima/chebrashka.html
- 作者: エドゥアルドウスペンスキー,Edward Uspensky,児島宏子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
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