chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

『ユーリー・ノルシュテインの仕事』(ふゅーじょんぷろだくと)

 ロシアのアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテインの画集『ユーリー・ノルシュテインの仕事』(2003, ふゅーじょんぷろだくと)を読んだ。

『ユーリー・ノルシュテインの仕事』。「きりのなかのはりねずみ」のはりねずみくん、こぐまくんとともに。

ユーリー・ノルシュテインの仕事』。「きりのなかのはりねずみ」のはりねずみくん、こぐまくんとともに。

 画集と書いたが、より正確にはノルシュテインの監督作品について、映画のためのエスキースとデッサン(ノルシュテインと、妻で美術監督フランチェスカ・ヤールブソワによるもの)セルロイドに描かれた切り絵の撮影素材や撮影所の写真にインタビューも載った本だ。まさに「ノルシュテインの仕事」をそばで見られる豪華な一冊。それだけに値段も張るので、存在は知っていたけれど買えないし、月日が経つうちにもう手に入らないのではないかとあきらめていた。ところが昨年末、まだ新品で売られていること、一般の書店でも注文できることを知って、この時を逃しては、本当にチャンスはない!と購入した。

 出版社ふゅーじょんぷろだくとの特設サイトはこちら。

www.comicbox.co.jp

 ノルシュテインの映画、最新の修復版(ぼくの感想は過去記事「2017年一番良かった映画『ユーリー・ノルシュテイン作品集 2K修復版』」参照)では、切り絵の人形のセルロイドのヘリが、目を凝らすと見える気がするほどくっきりしているのだが、この画集はそれに加えて、エスキースの絵の具の質感、筆の跡が見える素晴らしい印刷で、息をのんで見つめてしまう。『話の話』のうしくんのぽってりした形の重さ。おおかみくんの、はりねずみくんのぽそぽそした毛並み。アカーキー・アカーキエヴィチの手、お茶を飲む口元。どれも愛らしく、それでいて見慣れないもののような感覚もあります。映画では時間に沿って過去に行ってしまう家具をじっと見ていると、手を触れることができるかのようです。ノルシュテインの『きつねとうさぎ』『アオサギとツル』『きりのなかのはりねずみ』はそれぞれ絵本になっていて、ヤールブソワの繊細かつ濃密な絵が堪能できるが、この画集では映画や絵本とはまた別個に、一枚の絵として鑑賞することができる。

 いまだ未完の『外套』、ホームメディアではまだ手元に置くことができない『おやすみなさいこどもたち』『ロシア砂糖』もこの本には収められているのがまたうれしい。『おやすみなさいこどもたち』で少女と遊ぶ人形たちはどれも愛らしいのだけど、そのシーンが撮影素材を用いて再現されて絵になっている。このアニメのクマくんもとてもかわいいんだ。

 しかし、念願の外套を手に入れて有頂天、夢うつつのアカーキー・アカーキエヴィチが理不尽な悲劇に巻き込まれたのとそっくりな体験までするとは思いませんでした。画集を手にした次の日に、なんと本の背表紙が取れてしまったのです!本文と背表紙を張り合わせていた樹脂の接着剤がパリッ、ポロッとはずれちゃった。ページの糸綴じ部分には何の問題もなかったので、ハードカバーの本のように、寒冷紗を張り、クータをつけて直しました。不器用なぼくではうまくいかなかったので、手芸の得意な母にやってもらい、無事また読めるようになりました。

 本ではなくてCDやレコードの紙ジャケットで、接着剤がはがれてしまって、ノリでそれらを付け直すとか、ブックレットのとじ方が間違ってて自分で正しくつけるとかは何度かやりましたが、本の背表紙が取れたのは初めてです。こんなこともあるんですね。本の修理法に関しては、以下のサイトを参考にしました。


横浜市中央図書館サービス課 - 修理講座テキスト(PDF)

http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/library/volunteer/shuuritext.pdf

守屋中央図書館の「本の修理」サイト。PDFのマニュアルを印刷すると、使いやすいです。

本の修理 | 守谷中央図書館

 

ユーリー・ノルシュテインの仕事

ユーリー・ノルシュテインの仕事