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マウリ・クンナス『わんわん丘のゆかいな昔話』

 フィンランドの絵本作家マウリ・クンナスの『わんわん丘のゆかいな昔話』(いながきみはる訳、猫の言葉社)を読んだ。
 犬や猫、ぶたが人間のように暮らす「わんわん丘」を舞台に、「電気や自動車のない時代」のフィンランド南西部の民話を描いた絵本だ。クンナスの絵本は小人やサンタクロースといったフィンランドの伝説や伝承を描いたものと、この「わんわん丘」や眠りながら歩き回るヤギの「ぐっすりメーメさん」シリーズのように擬人化された動物が主人公のものとに大きく分かれる。どちらもキャラクターはかわいらしく、建築物や生活用品、暮らし向きはフィンランドの文物を詳しく描いている。この『わんわん丘のゆかいな昔話』はクンナスの故郷ヴァンマラ(現サスタマラ)に伝わる昔話が題材になっていて、力を過信したり、欲をかいたりしたものが痛い目に合う教訓話と人……じゃない動物ではない存在と遭遇する話が多く出てくる。わんわん丘も電気も自動車もない時代は人里から離れると、危険と隣り合わせだったりするのだ。

 クンナスの絵本が子どもの時から好きで、かわいいなあ、色合いがいいなあ、としょっちゅう読んでいるのだが、すべてを読んでいるわけではなく、「わんわん丘」シリーズもこれが初めてだ。「ぐっすりメーメさん」シリーズも犬やカバ、ぶたが町の住人で登場するのだが、メーメさん初登場作『ナイト・ブック』、『わんわん丘のゆかいな昔話』、どちらもよく似た犬の三兄妹がでてくるし、彼らの住む現代の町は「わんわん丘」の村の未来なのかもしれない。「わんわん丘/メーメさんサーガ」、アリだわ。のどかな村の土地が買い占められて、舗装され、集合住宅が建ってゆく、というような話は、現実の人間の歴史だけで充分だけど。なお、ぐっすりメーメさんはこの本にもカメオ出演していて、村のあちこちにパジャマとナイトキャップ姿でのんきに歩いている。メーメさんがどこにいるか探すのも、とても楽しい。

わんわん丘のゆかいな昔話

わんわん丘のゆかいな昔話