chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

Carla Bley / Trios (2013, ECM)

カーラ・ブレイTrios (2013, ECM)を聴いた。

 Carla Bley (piano), Andy Sheppard (soprano & tenor saxophones), Steve Swallow (electric bass)

Trios

Trios

 

  

 およそ半世紀に及ぶブレイの活動期間を概観できるほど、たくさんのアルバムを聞いたわけではないのだが、彼女の手がけた作品では、大編成でにぎやかに遊んでいるものが好きだ。かの『リベレーション・ミュージック・オーケストラ』しかり、『ライヴ!』しかり(この二つは日本でも再発が繰り返されることで、国内盤を主に取り扱うレコード店でも、いつも見かける)、近作ではAppearing Nightlyがよかった(はてなダイアリーに感想を書いていた。Carla Bley and Her Remarkable Big Band / Appearing Nightly - chilican はてな )。多分ぼくには大編成でいっぱい管楽器が入っているほうが、ブレイの曲のメロディーとか、なんだかへんてこなジョークが見えやすいからなのだろう。

 さて、冒頭に書いたように、このTriosはピアノとサックス、ベースの三重奏である。5曲入っているのだが、一曲を除いて編成を変えての再演。作曲者としては初演の"Vashkar"も、録音はいくつかあり、ぼくもトニー・ウィリアムスのサイケなハードロック版を聞いたことがある。でも、そのほかの曲は聞いたことがない。

 買ったばかりなのだが、スティーヴ・スワロウのベースばっかり聞いている。

 スワロウはまろやかな、伸びるベースを弾くのだが、主旋律を弾いたり、ソリストに回ったりしたときと、ベースパートを弾いているときとで、印象が変わる。主役だと高音域で、澄んだ音色で歌うのだが、ベースに回ると、アタック音を強調しないからだろうか、粒立ちははっきりしているのに、引っ付くような感じになる。そういう音色でうねうねとしたベースラインになると、聞き手は、酔う。ぐるぐる回転して目を回す遊び、あの感じです。特にアンリ・マティスにちなんだ三部構成の曲の、第一部。くるくる回っている間、足踏みがざっと言う感じでブレイのピアノがコンピングして、ストップ!

 ブレイはソロを弾いていたはずなのに、印象に残っているのは、そのリズム。ブレイとシェパードがどんなソロだったかさっぱり思い出せず、もう一度同じ曲を聞く。するとスワロウが、くんくんくんくぅーん、とくる。そうしたらまたいつの間にか曲が終わっちゃってですね。もう一度、前の曲に戻るボタンを押している。

 ……カーラ・ブレイのソロがどんなだったか覚えていられる日は来るのだろうか。