chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

David Sylvian / Manafon

デヴィッド・シルヴィアンの新作『マナフォン』をようやく入手しました。


David Sylvian / Manafon (Samadhi Sound, 2009)

出たばっかりのころはザッパ時空にいて、とにかく聞いてないザッパ作品を買って聞くんだ、という意気込みでいっぱい。とうとう復刻なったMothermaniaもダウンロードして買っちゃった(ザッパ公式サイトの情報ページはこちら)。『マナフォン』は別に予約などせずともいつでもかえるだろう、と思ってたら、いつの間にかアマゾンなんかでは輸入盤は3週間とかになってるし、近所のショップでは入荷すらしてなかった。ビートルズ・リマスター一色で、マナフォン?何それ?状態の店頭。地方都市なんてそんなもんさー、とはいえ最近は本当にむごい。

星光堂傘下の某チェーン店が日常的にいける範囲では一番大きいショップなんですが、ロック・ポップスはビートルズマイコーSHM-CDがババンと陳列され、ジャズコーナーではスウィングジャーナル誌ゴールドディスク(こういっちゃなんですが、コンサバティブなモダンジャズを下品すれすれな白人美女のモノクロジャケットにつつんでうりますよ。ジャズはスタンダードナンバーを原曲のメロディを崩さずにやるのがいいのだ、というポリシーのやつばっかり。そういうのって毎月新作を発売する意味あるのかしらん)と、ブルー・ノート名盤100を何十ビットリマスターで再発!クラシックコーナーも再発パジェット盤(の割りにDENON以外は安くなってないのが国内盤)と、カラヤン100年何とか。

ブックオフと変わんない、こんな品揃えで何を買えと。

さて、『マナフォン』であります。
気持ちが向いてきたときにCDが手に入りづらい、乗り遅れたかっ!
通販で高い国内盤買おうって気にもならないし、参加ミュージシャンもインプロヴァイザーや現代音楽関係の人が多いようだから、mp3リリースだと損した気持ちになる類の音楽だな、これは。
しばらく待つか……。(´・ω・`)

そしたら、シルヴィアンの公式サイト<Samadhisound.com>で、flac形式でダウンロード販売してたんですね。
物理的な円盤はないけど、可逆圧縮flacなら何の問題もない。で、こっちを購入。
ダウンロード販売では、迫力のある絵本、という趣のイラストがついたクレジット記載のpdfファイルもついてくるのだが、歌詞はなかった*1。CDのブックレットに歌詞がついているようなら、CD買っちゃうかも(まさかお高い限定版にだけついてる、ということはない、よね? щ(・`ω・´;)。
ないならないで耳で聞いて覚えるけどさ。

非常にかっこいいですな。
ギターやピアノ、チェロにサックスといったアコースティック楽器による旋律はウェーベルンのように切り詰められています。そこにあたかもガラスや鏡が反射した光や風の音、また自分たちがたてる生活の中の音のような感じでラップトップやターンテーブルが絡む。その中に座ってぼくたちにお話をしてくれる森の主、しるう゛いあんじいさん。

とまあ、こんな感じです。
具体的な演奏について言えば、シルヴィアンの節のついた語りは声の深みがあって聞きほれてしまうし、ほとんど尺八に聞こえるエヴァン・パーカーのソプラノサックスやジョン・ティルバリーのピアノは、その響きだけでぼんやりしてしまうくらい美しい。そこにフェネスの電子音やジョエル・ライアンによるコンピューターの作動音が絡みつく「エミリ・ディッキンソン」が今のところ僕は一番好きだ。そういえばシルヴィアンを高く評価し、対談等では共演の可能性も示唆していた武満徹の好んだ詩人が、ほかならぬエミリ・ディキンソンであった。
久しぶりにディキンソン読もうかな。

ところで、ぼくがよく見に行くブログでもこのアルバムを紹介していることが多いのですが(地下生活者さんpost-itさんFractalismさん)、オーソドックスなロック、ポップスがいいなあ、という向きには不評らしい。確かに電子音や特殊奏法が目立つ作品ではあるが、"Random Acts Of Senseless Violence"など、ギターとピアノの伴奏といい、かなりまっとうに「歌曲」していると思うんだけどなあ。

気がつくと終わっていて、もう一度聞き始めずにはいられない。
没頭しつつあっという間に時が経つものは間違いなくお気に入りになる。うん。

*1:でも、シルヴィアンの公式サイトにはちゃんと歌詞があるのでした。
http://www.davidsylvian.com/texts/lyrics_and_poetry/manafon_lyrics.html