chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

Keith Jarrett / Yesterdays

Keith Jarrett / Yesterdays (ECM 2060, 2009)

キース・ジャレットの新譜『イエスタデイズ』が出ました。
割引券があった+輸入盤より一週間早い、と言うことで国内盤を選択。
おなじみのトリオによる2001年東京でのライヴで、スタンダードやバップ曲のセレクションだ。同じときの録音のうち、キースのオリジナル曲と即興演奏はすでにAlways Let Me Goで発表されている。そっちは非常に気に入っているアルバムだ。

だが、すでに発表されているのと同時期で、なおかつ過去のアルバムと重複曲が多い、というのは、やっぱり宣伝するほうは悩むのか、サウンドチェックの音源から収録だの、伝説の来日公演だのと帯やライナーにはいろいろと、ちょっと苦しい言葉が並んでる。
原題は曲名だけのシンプルなものだけど、邦題として「東京2001」という副題がついているのは、録音と発売時期のずれを配慮したのだろう。かっこわるい副題だ。

確かにぼくも最初トリオの新作が出るって聞いたときは、2008年のライヴなのかなー、っと期待していたわけだけど、そもそも重複曲があろうが、ちょっと前の録音であろうが、サウンドチェックという一般人は聞けない場所での録音だろうが、そんなことはどうでもいいんだよな。スタンダード曲を取り上げてる時点で、少なくともテーマは多くの聞き手が知っているであろうことは、製作側も承知してる。京極堂の言葉に倣えば、「聞いたことがない音楽は大抵面白いが、一度聞いた音楽はそれより少し面白がるのに手間がかかるという、ただそれだけのことだ。」ということになろう。
2009年に2008年の録音が聞けないのも、そのうちどうでもよくなることだ。だって60年前のビバップだって、いまだにスリリングに聞ける。

そのかわり、おもしろがらせる手間も結構かけられていて、選曲もそうだけど、最後にキースたちの会話が入ってるところなどは、マイルスの「リラクシン」等でおなじみの仕掛け。ほがらかにエンディングを迎えます。
好きなアルバムの、遅れてきた双子という感じで、大騒ぎする感じではないが、聞けてよかった。

具体的なこと*1はまた書くとして、サウンドチェック録音の「ステラ・バイ・スターライト」冒頭のゲイリー・ピーコックのベースの入り方が、実ににくい。
ブックレットの写真でも、今回一番かっこいいのはピーコックだと思う。

*1: *2/3追記
今回のアルバムに収められた曲はチャーリー・パーカーがらみの2曲("Shaw'nuff"と"Scrapple From The Apple")のような華やかな演奏のものと、"You Took Advantage Of Me"や"Yesterdays"といった優美さを聞かせるものに大別されるが(その中でも、"Yesterdays"などは原曲同様に陰のあるやわらかさを聞かせる)、華やかさと優美さを兼ね備えているのが、"A Sleepin' Bee"だ。表題曲でこそないけれど、アルバムを象徴するのはこの演奏だ。