chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

フリップ&イーノ『(ノー・プッシーフッティング)』


Fripp & Eno / (No Pussyfooting)(1973, 2008 Remastered, DGM5007)
先日、同じロバート・フリップとブライアン・イーノの『イブニング・スター』について書きました。
『(ノー・プッシーフッティング)』はこのコンビの最初のアルバム。今回のリイシュー、やっぱりぼくが見に行くサイトでは注目度が高い。*1

『イブニング・スター』でもB面は1曲なのだが、このアルバムはアナログでは片面1曲ずつであった。CDでは、旧A面"The Heavenly Music Corporation"が5パート分、B面の"Swastika Girls"が2パート分トラック分けされている。
フリップがギター、イーノがループとシンセ、というのは『イブニング・スター』でも踏襲されているのだが、ほわーんとしたイーノの音と、みにょ〜んとしたフリップの音が重なり合ってたゆたう、というのはこのアルバムも同じ。

『(ノー・プッシーフッティング)』はジャケットにあるように、万華鏡を思わせるようなキラキラした感じと反復感がより強いです。"Swastika Girls"では「ギターソロ」(後の80年代キング・クリムゾンを先取りしている)があって、旋律をたどることが出来る。フリップのソロの中でもかなり優れたものだと思う。しかし、"The Heavenly Music Corporation"は特に大音量で聴くとめまいがするし、なんだか平衡感覚もおかしくなりそうな、やっぱり心地よいとは言い切れない音楽だ。ノイズとか、あるいはクラブの重低音の、耳じゃなくて皮膚で音を感じ取る感覚と同じものがあります。

さて、今回の再発ではボーナス・トラックが入って2枚組になっている。音源は同じなのだが、逆回転再生バージョンと、"The Heavenly Music Corporation"を半分のスピードで再生したバージョンだ。逆回転バージョンはこのアルバムがBBCのラジオで全曲放送されたときに誤ってテープのリールをさかさまに設置してしまい、そっくりひっくり返って放送されてしまったと言うことだ。ハーフ・スピード版は、フリップの熱狂的ファン(クリムゾンの伝記作者だそうです)とその友人たちが、もともとはギターをコピーするためにアナログ盤の速度を落としてみたら、本来のものとは違った味が出ていて面白かった、と。CDではレコードと異なり、個人で好きに試すのが容易ではなくなってしまったそれらの「別バージョン」をつけましたよ、ということなのだ。パソコンに取り込んだり、CD-J等があれば個人でも出来るから、わざわざ水増ししなくてもいいような気がしましたが、これが結構聴かせるのですね。水増し分を価格に転嫁した日本盤は買わなくていいと思いますけど、輸入盤はごく普通の一枚のアルバムと同じ値段です。

*1:キーワード等でたどれない「はてな」外では、ばりぐあちさんの「日記の部屋」での「フリップ&イーノ「ノー・プッシーフッティング」「イヴニング・」(2008年10月26日に買ったCD)」で言及されている。