chilican's diary

読んだ本や聞いた音楽の話をします。

PONYO

崖の上のポニョ、みてきました。

特にエポックメイキングな作品ではないけれども、「もののけ姫」以来複線を特に回収しない傾向が強かったジブリのなかでは、久しぶりに2時間で収まる娯楽作品ですた。

猫の恩返しもそうですが、気楽に楽しくみれる感じ。
例によって文明対自然という話題も出てくるんだけど、
自然を代表するキャラクターの一人がマッド・サイエンティストなので、単純な二項対立、文明批判で終わらせられず、環境問題が前景化し過ぎない。だから近年のジブリ映画ほど説教くささや人間への嫌悪感が先に立ってこない。

異種婚譚のフォーマットにのっとっているのだけれども、いまいち、目的の達成の代償がはっきり描かれていないんだよね。(というか、超有名な童話がはっきりとモチーフになっているのだが、その辺は伏せておきます。)説明はあるのだけれども。

というのは、作中で出てくる、ある「計画は」、たぶん首謀者の意に沿わない形でスタートしてしまったので、もともとの首謀者がそのオペレーションを止めるべく奔走するんですね。そこで異種婚が起こるのだけど、そこで首謀者が破局を回避しようとすることで、作中に悪人はいないことになるんですね。
過程はどうあれ、目的を果たすためにのみ行動する人物がいない(すくなくとも、そういう人物は出てこない)というのは、育児や教育に焦点が当たっているからかな。
宮崎駿が「かっこよく」描くのは今までもそういう意味で「ヒーロー」達なんですが、アンチヒーローが出てこないという点は、育児や教育に関して、あくまでも希望を持てるように描きたかったからではないかな。
もちろん、現実には宮崎的「アンチヒーロー」はたくさん存在しているのだから、そういうのを前に出すべきではないか、という批評もありでしょうが、あくまでも希望を持つ姿勢の現われとして受け取りたい。

そのように考えると、この映画は近年のジブリ映画ほど説教くささや人間への嫌悪感が先に立ってこない。
深刻ぶらない、なんとも鷹揚なところが好きです。

だって、もののけ姫とか、しんどいじゃない。

食事のシーンになれば、ああ食べたいな、と思うし、船に乗るシーンは、気持ちがよい。
その手の体に来る場面はちゃんとありました。
そういうところがあるのも、宮崎駿の映画を見る楽しみなので、「目玉焼きパン」(@ラピュタ)ファンの方は期待してください。